2019/07/03

中小企業から地域企業へ

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46779780Q9A630C1TJC000/

SDGsてこれまで、日本がやってきたことにすごく近い。日本を世界にPRできるチャンス。SDGsは世界で年12兆ドルの市場機会を生み出すともいわれ、新規参入のチャンスでもある。もちろん、自治体も地域経済活性化に使いたい。

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京都市は4月、中小企業振興課の名称を地域企業振興課に改めた。「企業はもはや規模が基準ではなく、自然、文化など地域に根ざして共に発展していく時代。持続可能な開発のための目標として国連が定めたSDGsにも一致する」と門川大作市長は説明する。

同月施行した「京都市地域企業の持続的発展の推進に関する条例」は企業規模を基準とせず地域とのつながりに着目した全国初の条例。「企業の事業活動を通じ地域コミュニティの活性化、文化の承継、自然環境の保全などに貢献」とうたい、支援策も掲げた。

京セラ、村田製作所、日本電産など京都に拠点を構えて海外と直接結ぶ企業を擁する風土から、地域企業という言葉が発信されるのはごく自然に思える。

中小企業から地域企業へ――。呼び方を変えることで経営者の意識や周囲の捉え方は変わるはずだ。中小企業には成長性、機動性、雑草のような生命力といった印象の一方、不安定、低賃金、長時間労働、下請けなどの負のイメージがつきまとい、就活生が敬遠する一因にもなっている。

地域企業の一つのキーワードは、社会的課題をビジネスで解決したり、社会的課題を生まない商品やサービス、システムを生み出したりする「ソーシャルイノベーション」だ。2015年創設の京都市ソーシャルイノベーション研究所は地域で起業などの相談に乗るキュレーターを4年で100人近く育てたほか、この考えに沿う「これからの1000年を紡ぐ企業」をすでに20社認定した。

例えば5月に認定したカンブライト(同市)。規格外やとれすぎた農水産物を100個程度から缶詰にする商品化支援をしている。農家や漁業者から開発を受託して試作品を作り、協力工場で小ロット生産する。「小規模な加工場のネットワークを5年で300カ所に増やし、地方創生にも貢献したい」と井上和馬社長。スーパーに加工場を併設し、売れ残った食材を缶詰にすることも研究中だ。

発酵食堂カモシカ(同市)は発酵食品専門のレストラン運営や発酵食品キットの販売、企業に出向いて健康指導をするコンサルティングも始めた。関恵社長は「本質的な価値が詰まっている発酵を京都から世界に広げたい」と語る。

「企業も地域が持続していく状態を考える。こうした企業が育てば京都のブランディングにもなる」(研究所長の大室悦賀・長野県立大学教授)

中小にとって「地域」を入り口に環境問題や貧困、教育など持続可能な17の開発目標を定めたSDGsを考えるのが早道だ。大企業ではSDGsへの取り組みが進み、素材調達でも中小に影響が及ぶのは間違いない。一方でSDGsは世界で年12兆ドルの市場機会を生み出すともいわれ、新規参入のチャンスでもある。

大阪市の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」が9日に開く海洋プラスチックごみ問題の解決を目指すSDGsフォーラムには予想の100人を上回る300人以上が申し込んだ。自社の技術や経験で地域課題の解決に何ができるか。「地域」の視点を持てば新しい世界が見えてくる。